リンネ寝室1 シーンテキスト

深闇のあぎとが、
世界を喰い尽くしてしまったような
奇怪な夜だった。

その扉は、
見知った城内の一風景であるというのに、
妙に余所余所しく映った。

リンネ
「待っておったぞ」

――刻詠の風水士リンネ。
扉の向こうに、彼女はいた。

全ての未来を知覚し、ただ傍観する者。
リンネは前に、自らをそう語った。

リンネ
「待つというのは正しくないか……。
識っておったぞ……うむ、これが正しかろう」

独りごちるリンネは、
如何な感慨も示さぬ美しい顔で、
俺を見据えた。

リンネ
「近う寄れ……汝(なれ)はこの時、この位置で、
吾(あ)との戯れを享受すると定められておる。
そうであろう……?」

リンネの言葉には色が無い。
虚無と言ってもいい。
美しいというよりはかないのだ。

その言葉は不思議と俺の心を揺さぶり、
奇妙な確信で俺の動静を操る。

気づけば、彼女の座るベッドの上に、
肩を並べて座っていた。

リンネ
「そうじゃ……ここで良い。
さあ、汝はどうしたい……?」

――己の意思。
この室内において
それが必要であるなどという気配は微塵もない。

リンネから発せられる徒花にも似た薄い香りが、
思考の首元をゆっくりと締め上げていく。

リンネ
「ほう……そうか、
汝は吾のここに意識を向けるか」

笑顔になり損ねたような冷たい表情で、
リンネは俺の手を自分の胸へと導いた。

東方の民族衣装の上質な手触りの向こう側で、
リンネのたおやかな胸の感触に指先が呑み込まれていく。

リンネ
「大したものじゃろう……貧相な胸では、
殿方は喜ばぬもの……いや、一概に断ずることはできぬか。
我慢せい、吾はこういう身体と世に定義されておるのじゃ……」

理解などできようはずもないリンネの言葉を耳に受け、
俺は知らぬ間に彼女の双乳を一心不乱に揉みしだいていた。

リンネ
「善哉、善哉……そうじゃ、吾の身体を喰め。
そうすることが、此の刻が定めた汝の役目よ……」

心地よい感触と、薄甘の匂いに、意味不明の言葉の羅列。
それらすべてが、有り得ないほどの心地よさとなって、
俺の身体を蝕んでいく。

豊満な淫乳に沈む十指の先すべてが絶頂しそうな錯覚に陥る。
これは、いったい何なのだ?
彼女はいったい何者なのだ?

リンネ
「ん……頃合いじゃのぅ……どれ、身を預けるがよい」

感情の欠落した吐息のような声音に合わせ、
俺はゆるやかにベッドへと身を横たえた。

――しゅる。
間もなく、衣擦れの音が聞こえると、
リンネの白い柔肌が露わになった。

リンネ
「どれ、既知の事象なれど、
現(うつつ)とはかくも身が熱ぅなるものよな……」

――いつ俺は裸に剥かれていたのだろう。
そんな疑問のいくつかは疾うに些末事となっていた。

白磁の色彩にも劣らぬ美しき乳房に、
リンネの可憐な双手が優美に添えられると、
さも当然のように俺の陰茎を挟み入れた。

リンネ
「どのように感じるのじゃ……?
吾はおのこでは無ぅ故、感覚までは解しえぬ。
だが……んっ……この硬さをみるに、心地よきものなのだな?」

聡明さの極みのような無表情が、
僅かに朱に染まっている。

紅らんだ頬と、突起した乳頭。
きつ立した肉棒を扱き上げる壮観な胸の弾み。
全てが快楽の大海となって俺を呑み込んでいく。

リンネ
「ん……んぁ……はぁ……ちと、難儀じゃのぅ……。
汝の肉刀は、かくも大きく、精気に満ちあふれておる……」

少しずつ、ほんの少しずつだが、
リンネの声に熱がこもっていく。

ずり落ちる袴から覗く、
見事な肉尻の隆起が夜眼にも鮮やかだった。

リンネ
「後何手で果てよるか……汝は知らぬだろう……んっ……。
じゃが吾は識っている……ん、んぁ……淫らな汁を先走らせおって……、
案ずるな……全てを委ねよ……吾が、汝を……んっ……ふぁ……」

冷静さと知的さを含んだ双乳の締め上げが、
不意に野生と暴虐の苛烈さに染まった。

胸による締付けと擦込みの速度が増し、
同時に、リンネの小さな桃色の唇が、亀頭に触れた。

リンネ
「ちゅむ……んぁ……ふぁ……ぁっ……ずちゅる……ちゅる……、
ぅ、ぷぁ……どうじゃ……はぁ、ぁ……これが、いいのじゃろう?
汝がどこまで絶えられるか、分かっていても愉しいものよな……」

深蒼の両眼を向けながら、
リンネは唾液と我慢汁の混ざり合った液体を亀頭に垂らし、
谷間に馴染ませ、淫らに音立てる。

これまで感じたことのないような得体の知れない快楽と安寧に、
押し止めていた情欲の噴流が忍耐の壁を全て破砕した。

――びゅるるぅっっっつ! びゅるぅびゅるるぅっっ!!

リンネ
「ふぁっ……ぁ……んっ……そうじゃ……もっと、もっとじゃ。
……吾に汝の性を解き放つのじゃ……んんっ……何と熱く……
生々しく猛っておるのじゃ……んっ……」

噴水じみて放たれる精液の躍動に、
リンネの整った冷涼な肉体が汚されていく。

それでも動じないリンネの達観した様子と、
流麗な黒髪に垂れ落ちる精液の卑猥さに、
得も言われぬ妖艶さを感じた。

リンネ
「ひぁ……んんっ、鼻先にまでかけよって……、
ぴちゅ、んっ……ちゅぅ……ちゅる……、
ふぁ……面妖な味よな……ふふ……」

全てを識りながら、
その殆どを経験したことがないリンネにとって、
これは初めての顔射であるはずだ。

笑顔、とまでは言えないが、
その表情はどこか満足気であるように見えた。

リンネ
「どうした?
何がそんなにおかしいというのじゃ?」

知らぬ間に俺は笑っていたようだ。
それはきっと、
目の前の少女を可愛く思ってしまったからだろう。

飛び散った精液を舐め、
挟み込んだ性器を触る。
リンネのその仕草は児戯にも等しい。

全てを識りながらも、
まるで赤子のように万象に興味の眼光を向ける少女。
――彼女はその実、ある意味では何も知らないのだ。

リンネ
「な、なんじゃと申しておろうに……。
このような流れを吾は識らぬぞ……」

上目に俺を見つめるリンネの表情が、
わずかに驚きに歪む。

そして次の瞬間、
リンネの円らな瞳が、大きく見開かれた。

リンネ
「未来が……変わった……?
そうか、そうなるのか……実に奇怪なことよな……」

何かを納得したリンネは、
先ほどまでの涼しげな表情を取り戻し、
俺に言った。

リンネ
「汝は……吾を犯すのだな。
善哉、善哉…………。
そういう未来もあるのじゃな……」

その言葉が、
俺の意識を変えたのかは知らない。

ただ分かるのは、
この時の俺が、確かにはっきりと、
このリンネという少女と繋がりたいと、そう思ったのだ。

リンネ
「汝は優しさと苛烈さの両極よな……。
時に仏を、時に修羅を、その身に宿す……。
さて、吾はどちらの王子に出会えるのか……楽しみじゃ」

リンネ
「吾を求めよ……王子。
吾をどのように抱くかは、
汝の気の向かうままにじゃ……」