ラクシャーサ寝室1 シーンテキスト
ゆっくりと湯船の中に体を沈めていく。
段々と熱くなっていく心地いいその
感覚に、俺は目を細めた。
外でこうして湯につかるのもいいな、と
思いつつ空を見上げると、見事な星空がそこにあった。
しばらくそのまま見ていたが、何者かが
ゆったりとした足取りで近づいてくる音と
気配を感じて振り返る。
ラクシャーサ
「良い眺めだな」
するとそこに、体にタオルを巻いたラクシャーサが
立っていた。
驚いている俺をよそに、彼女はけろっとした表情だ。
ラクシャーサ
「なに、たまには背中でも流してやろうと思ってな」
手招きされ、戸惑いながらも彼女の前に
後ろ向きで座ると、ラクシャーサはタオルに
泡をつけた。
そのまま泡立て、俺の背中を優しくこすり始める。
ラクシャーサ
「こういったことを、お前の祖先とはしたことが
なかったな。
顔を合わせれば自然と剣を交えていた……」
かつて、俺の祖先と戦っていた彼女は
その時のことを楽しそうに話し始めた。
あの時は毎日が退屈で、祖先と出会ったときは
最高に胸が震えたものだ。と彼女は
背中を流しながら教えてくれた。
ラクシャーサ
「お前はあのころのやつに似ているな」
体についた泡を洗い流し、
彼女とともに湯船のなかにはいる。
ラクシャーサ
「ふぅ……。
そういえば、お前は今後の戦いをどう考えているんだ?」
ふと彼女からそう聞かれ、俺はこれからの戦いは
さらに激化すること。それに伴い兵士の育成や、
仲間を増やすことが重要になってくることなどを告げた。
ラクシャーサ
「育成に関してはもっともだな。
なにせ人間は我々と違い簡単に死ぬからな」
ラクシャーサ
「だが……、だからこそ生きることに執着し、
今を精一杯生きているのかもしれんな」
魔界という世界で生きてきた彼女にとって、
人間の一生などあっという間だろう。
ラクシャーサ
「昔の私ならば、こんな考えを持つことは
なかっただろうが……。
これもあいつとお前の影響かもしれないな」
あいつというのはおそらく祖先の事だろう。
ラクシャーサ
「ふっ、そう考えると受け継がれるものは
年月を経てもちゃんとあるものだな」
目を細め笑う彼女は、体が火照ってきたのか
立ち上がるとそのまま浴場のふちに座った。
魔族の紋章が体のあちこちに刻まれ、
照れることなくその肉体をさらした彼女に
思わず目を見開く。
ラクシャーサ
「ん? あぁ。別にお前なら見てもらって
かまわないさ」
引き締まった体は少し濡れているせいか妖艶で、
いつも以上に色気を感じさせた。
ラクシャーサ
「別に、女の体くらいどうということは
ないだろう?」
笑顔でそう言われては返す言葉もみつからず、
そのまま彼女は普通に話し始めた。
そして俺は彼女の体を意識しつつ、
会話はしばらく続いた――。