ラキュア寝室1 シーンテキスト
闇すら寝静まる深夜の静寂は、
彼女の来訪によって唐突に打ち破られた。
ラキュア。
永劫の時を生きる、とある氏族を束ねるヴァンパイア。
その少女は、逸話に違わぬどう猛さで俺をベッドへと押し倒した。
ラキュア
「どうした人の子よ。
少しは抵抗して見せろ。
これでは私が一方的に襲っているみたいではないか」
みたいではなく、実際そうだった。
抵抗しようにも彼女のりょ力は尋常じゃない。
吸血行為を抑え、灰からの蘇生を果たしてもなお、
彼女の身体能力は異常だった。
ラキュア
「襲っているのではない、これは求愛行動よ。
どうだ、そそるだろ?
こんな美女はそういない。感謝するのだな」
加虐性愛の権化のような利発な笑みを浮かべて、
ラキュアは俺の服をその爪で引き裂いていく。
ラキュア
「ん? おいおい、まさかこんなことで……。
随分と節操なく硬くさせよって、
まさか乱暴にされるのが好きなのか?」
形のいい眉をひそめ、
わずかに蔑むような視線を向けるラキュア。
――わからない。
驚きと恐怖が胸を満たしているはずなのに、
下半身だけが別の生き物のように欲望にたけっている。
ラキュア
「詮無きことよ。
予のチャームを湛えし眼光が、貴様の理性を剥ぎ取り、
目の前の生き物を無条件で欲するように仕向けているのだ」
そう告げると、
ラキュアも漆黒のドレスを脱ぎ捨てて、
歪に膨らみ始めた肉棒に指を絡ませた。
氷のように冷たい五指が、
熱した鉄のようなペニスに食い込んでいく。
その感触だけでイきそうだった。
ラキュア
「気持ちよさそうにしおって……、
だが、その顔は悪くない。普段の精強なものとは違う、
愛らしさがあるぞ、王子」
もったいぶるような緩慢さで竿をしごくラキュアは、
快感にうめく俺の顔を愛おしそうに見つめてくる。
見れば、彼女の露わになった薄桃色の秘部が、
ペニスの根元にこすりつけられていた。
ラキュア
「ふ、ぁっ……そうだ、もっと鳴いてみせろ。
其方は、予の関心をひくに足る希有な人間。
もっと、声を聞かせておくれ……はぁ、んっ……」
淫らな熱に浮かされるように、
ラキュアは手と腰を流麗に動かし、
俺を未踏の快楽の地平に引き連れていく。
頭がぼうっとする。ただただ気持ちいい。
これは、なんだ? 現実なのだろうか?
わからない。わからないことがわからなくなる……。
ラキュア
「んぁ……ふぁ、あ……なんて熱く猛々しいのだ……、
また肥大させよって……ひぁっ、ぁ……んっ……」
ラキュアの深紅の瞳が、
愉悦の光をきらめかせている。
その不思議な両眼に吸い込まれそうになる。
気を抜けば、俺は全てを捧げてしまうだろう。
それだけは、だめだ……だが、あらがえない。
ラキュア
「よいのだ……我慢など、予の前では不要よ。
さあ、果ててしまえ王子。抵抗もせずみっともなく押し倒され、
斯様なわい躯の少女になぶられた末に、盛大に精液をぶちまけるのだ」
圧倒的な優位性を誇示しながら、ラキュアは強く俺の肉棒を掴み、
しごき倒す。痛みすらも快楽に転じ始め、彼女の所作すべてが俺を
虜にし、堕落させ、どこまでも委ねてしまいたいと願い始める。
もうだめだ……。
俺は、ラキュアに壊されてしまう……。
ラキュア
「もうはち切れそうだぞ……ぁっ、んぁ……こんな、
暴虐的なペニス、見たことがない……ほら、出せ……
これは命令だ……私の手によって、情けなく射精するのだ」
その言葉が鋭いナイフのように俺の鼓膜を貫くと、
ラキュアの身体を穿つような勢いで精液が飛び出した。
ラキュア
「ひぁッ……く、そんな……馬鹿者……出し過ぎだ……、
こんな、暴れ馬のようにびくびくと……ぁっ、ぁあっ……、
な、何度だせば気がすむ……ふぁっ……こら……」
自分でも驚くくらいの射精量だ。
それを手にするラキュアが困惑するのも無理はなかった。
全てを出し切ってしまうと、
俺の身体の奥底からは、
気だるい疲労が飛沫のように浮上してきた。
ラキュア
「あむ……ちゅ、ぁ……はむ……なかなか……ちゅぱ……、
濃い味だ……さすがは王子といったところか……、
良い子種よ……んむ、ふぁ……」
身体や手に飛び散った精液を舐めながら、
ラキュアが何かを言っている。
聞こえない……。
何もかもが希薄で。ただ疲れた。
残っているのはやんわりとした幸福感と、ぼう漠とした――。
ラキュア
「――どうだ? どんな夢をみた?」
眼前にラキュアの深紅の瞳があった。
俺は驚きで声をあげ、身を起こした。
見れば、先ほどまで裸だったラキュアは、
いつものように漆黒の豪華なドレスを纏っている。
ラキュア
「何が起きたか分からないのか?
淫夢さ。予の使い魔のひとつを貸してやったのだ。
日頃の疲れを癒やしてやろうと思ってな」
淡々とそう口にするラキュアは、
呆気にとられる俺を見て、少しだけ笑った。
あれが、夢?
ウソだろう?
ラキュア
「なんだ、不満そうな顔で……いや怒りか? 違うな……
なんとも混迷かつ複雑怪奇な表情をするな王子は。お主が好意を
よせる女性と夜伽を愉しめたというのにその顔はないだろう?」
ラキュア
「で、誰だったのだ?
少しくらい予に教えてくれてもいいだろう?
人の色恋沙汰は、どれだけの時を経ても興味は尽きぬからな」
俺は、何か大事なものが心の深奥で
大きな音をたてて崩壊していくのを感じた。
それは多分、
理性という名だったと思う。
ラキュア
「王子……?
どうしたというのだ、黙り込んで……王子?
なあ、応えぬか――きゃッ!?」
次の瞬間、俺はラキュアをベッドへと押し倒していた。
次こそは、現実だ。
楽しみにしていろ、灰蘇の吸血鬼ラキュアよ。
夜はまだ、始まったばかりだ――。