ディエーラ寝室3 シーンテキスト

――何故、泣いているんだ?

そう問いかけると、ディエーラはようやく、
自身が涙を零していることに気付いたようだった。

ディエーラ
「あ、あれ……?
おかしいですね、あれ、わわ、涙が……うぅぅっ」

夜更けの寝室。

ディエーラと夜を過ごすのは、
もはや当たり前の日常となりつつあった。

だが、こんな風に涙を流す姿は、
やはり見た覚えがない。

ディエーラ
「あ、あれぇ……どうしてでしょう……。
寂しくも無いし、悲しくもないのですけど……」

先程まで楽しそうに腰を振っていたディエーラは、
手の甲で涙を拭っては首を傾げている。

確かに、ぽろぽろと雫は溢れているが、
彼女の表情は悲しそうというより、むしろ幸せそうなものだった。

何か思い当たる節はないのかと問うてみると、
ディエーラはしばし、むむぅ、と唸って、

ディエーラ
「……思い当たること」

ディエーラ
「――あっ」

何か思い出したのか?

ディエーラ
「……あの、さっきまでの会話、覚えてます?」

……会話?

ディエーラ
「はい、あの、セックスしながらしてた会話です。
将来の話とか、子供が何人欲しいとか、そういう」

身体を重ねながら、俺達はこの戦争が終わった後の、
平和になった世界での他愛もない空想を巡らせていた。

ディエーラと過ごす日々はどうなっているのか、
俺達にも子供が出来るとしたら、
果たしてどちらに似た容姿になるのだろう、だとか。

ディエーラ
「……えへ、たぶん、想像したら
あまりに幸せ過ぎる未来だったので、
ちょっと気が緩んでしまったのだと思います」

ディエーラ
「王子とずっと一緒に、幸せな未来を生きている、
そんな想像をしたら、あまりに幸せすぎて……」

それで、泣いてしまったのか。

ディエーラ
「はい……えへへ……」

ディエーラ
「さすがに気が緩みすぎ、ですよね。
魔物との戦いは、きっとまだ続くのに」

この戦争の終わりは、まだ見えないままだ。

だが、そんな幸せな未来を、
想像ではなく、本物にするために俺達は戦っているのだ。

ならば、ディエーラの想像を馬鹿にすることは出来なかった。

ディエーラ
「……えっ? も、もっと、聞かせてほしい、ですか?」

ディエーラの問いかけに、俺は深く頷き返す。

彼女の思い描く、最高の未来を教えてほしいと問いかけながら、
俺は両の手を、ディエーラの小さな手と重ね合わせる。

ディエーラ
「そう……ですね……んっ、たとえば……」

ディエーラは、ゆったりと腰の上下運動を再開させながら、
己の心の中の幸せの形を探っている様子で、

ディエーラ
「たとえば、私はあなたの妃になっていて……」

ディエーラ
「んっ……ふぁ……そうですね……えぇと、
王城の中庭で、子どもたちに囲まれて……」

きゅう、とディエーラの膣口がきつく収縮する。

想像した光景のあまりの眩しさに、
力が入ってしまったのだろうか。

ディエーラ
「んぅぅっ、ぁ……ふぁ……。
パパ……でしょうか、いえ、
王族ですし、お父様の方が良いかもしれませんね……?」

ディエーラ
「お父様、お母様って、かけっこをしながら、
子どもたちがこちらに手を振ってくるんです」

ディエーラ
「ふぁぁああっ、んっ、んぁああっ!
それから……んぅぅっ、そうですね……」

ディエーラ
「あ、子どもたちから、
私達の馴れ初めを訊かれるとか、どうでしょう……?」

ディエーラ
「まさかお金で買われたなんて……ひぅぅっ、
んぅっ、言えませんよね……♪」

ディエーラ
「そうだ、公務の合間をみて、
一緒にピクニックにもいきたいですね……」

ディエーラ
「それで……あぁっ、んぅぅっ、
護衛の兵士さんから逃げ出して……ひぁああっ」

ディエーラ
「森の中で、こっそりふたりだけで……んぅぅっ、
て、手をつないで、お散歩したり、してぇ……っ」

自制がきかなくなっているのだろう、
ディエーラは無心に腰を振りながら、
己の内から溢れ出す言葉を紡ぎ続ける。

彼女の語る未来は、俺にとっても幸せの形そのもので、
目指すべき理想の形そのものだった。

ディエーラ
「ふぁぁぁあっ、んぅぅっ、
それから……えっと、それから……んやぁあっ!」

ディエーラ
「だ、だめっ、幸せなのか、気持ちいいのか分からなくてっ、
な、何もっ、考えられ……んやぁああっ!?」

おそらく、幸福も快感も溢れかえってしまっているのだろう。

ディエーラは大粒の涙を零しながら、
貪るように腰を振り続けている。

柔らかな膣肉に包まれた肉棒には、
すでに限界が近づいていたが、
もうしばらく、彼女の語る幸福な未来を聞いていたいものだった。

ディエーラ
「ふぁぁあっ、で、では、こんな想像はどうでしょう……?」

ディエーラ
「子供が出来るまえ……そうですね……えっと、その……」

ディエーラ
「私が、あなたからプロポーズをされる時、
その時の言葉を、想像してみるというのは――」

商人らしい、ズルい提案かもしれない。
俺は彼女に、本心を伝えられる立場ではないのだ。

国を、世界をかけて戦い続けなければならない俺が、
彼女ひとりに愛をささやくことなど、許されることではない。

だが、これは空想なのだ。
ならば――

ディエーラ
「――はい、王子」

ディエーラ
「あなたに、永遠の愛を誓います」

ただのごっこ遊び、ただの空想。

それでも、この一瞬だけ、
俺達の心が通じ合ったような気がした。

ディエーラ
「ぁ――んぅぅっ、ふぁぁあ……ッ!!」

緊張が解けてしまったせいだろう、
我慢していた絶頂の波が押し寄せたのか、
ディエーラはひくひくと、身体を震わせる。

膣口の収縮に促されるように、
俺も快感だけではない、幸福に満ちた感情を、
彼女の最奥へと解き放った。

ディエーラ
「……ぁ……ふぁ……う」

ディエーラ
「うぅぅぅぅ……ど、どうしましょう……」

ディエーラ
「王子が泣かせたんですよ、私を」

ディエーラはぽろぽろと涙を零しながら、
優しくこちらを睨んでくる。

両手をつないだままのせいで、
目元を拭うことすら出来ていない。

ディエーラ
「もう……意地悪なんですから」

ディエーラ
「でも、素敵な夢が見られました」

ディエーラ
「私の目指す、一番幸せな未来です」

ディエーラの言葉に、俺は首肯を返す。

終わりのない戦争が続く中でも、
幸福な未来を思い描くことは出来るのだ。

そうして俺達は、しっかりと抱きしめあったまま、
ふたりの望む未来の形を、ゆっくりと語り合ったのだった……。

ディエーラ
「――あっ、もちろんさっきの空想を、
本物の未来にしてくれても良いんですよ?」