シンシア寝室2 シーンテキスト

聞き逃さなかったのが不思議なくらいの小さな音で、
自室の扉がノックされた。

こんな夜更けに一体誰だろうか、と
俺は自ら扉を開けて、その主を出迎えることにした。

シンシア
「――あ……お、王子……すみません。
急な来訪で、無礼ですよね。
ご都合が悪ければ、出直しますが……」

いいから入れ、と俺は彼女を部屋に通した。
俺は自分の椅子に腰を下ろしたが、
シンシアは差し出した椅子に座らず、立ったままだった。

その顔にはどこか思い詰めたような
重苦しい色が張りついており、
まるで不始末を怒られる前の子供のようにも見えた。

シンシア
「あの……お耳に入られているかもしれませんが、
実は先日、私はニナとフローリカの助力のもと、
自身の力を高めることに成功しました……」

恐る恐るといった調子で言葉を紡ぐシンシアに、
知っている、と俺は言った。

先の戦にて、シンシア率いる小隊が窮地に陥ったが、
仲間の聖霊たちによる援助によって新たな力を獲得し、
死地を脱したという報告をアンナから受けていたからだ。

シンシア
「……私は自分が恥ずかしい。仲間に助けられるまで、
傍にいるはずの友を軽んじ、疎んじ、見下しすらしました。
それなのに、ニナもフローリカも、私を助けてくれました」

シンシア
「おごりや焦りがあったのは確かです。
ですが、どれも今となってはただの言い訳……。
王子、お願いです……私を罰して下さい……」

必要がない者に罰を与えるなどできるか、
と俺は申し出を一蹴した。
シンシアは呆気ないほどの俺の短い返答に歯がみした。

シンシア
「ニナもフローリカも、私を責めないのです……。
私を慰め、諭し、見守るような視線を向けるだけなんです……。
これでは、あまりに惨めじゃないですか……」

シンシア
「……こんな大きな身体など、なければよかった……、
なぜ私だけがこのような醜い巨体を晒さなくてはいけないの……、
どうしてニナやフローリカのように可憐でいられないのですか……」

アイスブルーの美しい両眼から、
大粒の涙がぽろぽろと零れては落ち、
彼女の拳の代わりとばかりに床を幾度も叩いた。

俺は、前に大浴場でしたように、
彼女の頭に手をおいて、
ゆっくりと撫でてやった。

シンシア
「王子……私……私は……王子の役に立ちたかった……。
でも上手くやれているか、自信がなくて……不安で……、
他者を見下すことで、なんとか取り繕って……」

抑えきれない自身への悔恨が、
止めどない落涙の奔流となり、
彼女はふいに自分の顔を両手で覆った。

大丈夫だから。
そう囁いて、
俺は静々とシンシアの身体を抱きしめる。

シンシア
「私は……卑怯です……王子ならきっと、こうしてくれること、
分かっていて……だからこんな時間に……でも……それでも、
私は王子が……王子のことが――んんっ……!?」

俯きがちだった彼女の泣き顔が
僅かに上がったのを合図とし、
俺は言葉を遮るようにその小さな唇にキスをした。

驚きに大きく眼を見開くシンシアだったが、
急にその強張りが彼女の総身から消え、
まぶたがゆっくりと閉じられていく。

シンシア
「ぁむ……ちゅ、んっ……ふぁ……はぁ……お、王子……、
今、私……王子と、口づけを……こんなことって……、
夢では、ないのでしょうか……?」

糸ひく涎の名残すらいとわず、
ぼう然とする焦点を必死に俺に合わせ、
涙目のシンシアが問いかける。

そのぼんやりとした現実感を、確固たるものに変えてやろうと、
俺は二回目の接吻を与え、
ゆっくりと彼女をベッドへと押し倒した。

シンシア
「ふぁ……んっ……王子……私は……聖霊、です。
仲間の皆さんのように、王子の相手を務められるなど、
思ってもみませんでした……でも、欲は私にも、あります……」

シンシア
「私を、お抱き下さい……どうか、一人の女性として、
今日だけは、私を……私だけを、その目にとめてください」

俺は自分のもてる最大限の慈しみをもって、頷きを返した。

互いにもう迷いなどなかった。
ただ、そこには愛しさがあって、
二人の雌雄がいるだけ。

シンシア
「……変ですね、私……今、王子の前で、裸になってます……、
もちろん……恥ずかしさはありますが、今は……王子の眼に、
私のこの身体が映っていることが……何より嬉しいです……んっ」

俺の舌先が、彼女の乳房を這い始める。
円を描くようにして、徐々に頂へと進み、
硬くなっていく先端を甘く噛んでは、舌で舐め癒やす。

シンシア
「ぁあっ……んっ、すごい……はぁんっ、
こんな、にっ……気持ちいいっ、なんて……
ふぁ、ぁあっ……!」

ぴくんと、何度か身体が強ばって、
そのたびに彼女の口から、控えめな喘ぎが漏れ出す。
その声音だけで、俺のペニスは硬くなっていく。

片方の手で重量感のある形のいい胸を丁寧に揉み、
もう一方で彼女の秘部を優しく愛撫する。
すると、すぐにぴちゃぴちゃと小さな音が部屋に響き始めた。

シンシア
「ゃぁん……ぁっ、王子……ふぁっ、聞かないで……ぃやぁっ、
……こんな、ちが……んんっ! 私、こんな……はぁんっ……、
いやらしい……女の子だって……思われちゃう……ぁぁッ……!」

耳をふさごうとしたのか、ためらいがちに
俺のこめかみあたりに、シンシアの両手が伸び、
結果として頭から抱きしめられるような体勢になる。

俺はその勢いを利用してより彼女と密着し、
すでにぐずぐずに濡れそぼった薄桃色の淫華に、
ズボンから取り出したペニスを押しつけていく。

シンシア
「ぁあんっ……王子……すごく大きい……わ、わたし……んぁっ、
ちゃんと……ふぁっ、ぁっ……受け入れられる、でしょうか?
……王子に、愛してもらえる……んっ……でしょうか……?」

ぱんぱんに張り詰めた亀頭が、
シンシアの不安を討ち払うようにして、
湿った肉扉をゆっくりと広げて入っていく。

きつかったが、不思議と拒まれることはなかった。
驚くほどにすんなりと、俺のペニスは彼女の中に、
その半身を挿れ終えてしまう。

シンシア
「――ひゃぅっ、んっ……い、いたぃっ……王子……こんなに、
こんなに……痛いなんてッ……んぁっ……はぁ、ぁ……でも、
この痛みが……今は、愛おしい……もっと……きてください」

シンシア
「私に……ゃあっ、ぁんっ!
もっと刻みつけて……ください……ふぁっ……ぁん……っ、
未熟な私を……もっと、罰して……ぁあっ!」

破瓜の痛みを
これまでの行いの償いと考えているのだろうか。

それはちがう、と俺は彼女の耳元で囁く。
この痛みは、終わりではなく、始まりの祝砲。
その痛みは、他者を受け入れるためのイニシエーション。

聖霊たちとの不和も、分かり合えない苛立ちも、
遅すぎる後悔と、消えてくれない悲しみも、
全部、必要な痛みなんだ。

シンシア
「ぁああっ! 王子、王子ぃっ! もっと深くまで……ゃあんっ、
ふぁっ……繋がって……感じたい……です……愛されることを、
もっと……んっ、んぁっ! もっと教えて下さいぃ……ぁアっ!」

根元まで全て彼女の中に俺自身が入り込むと、
彼女はそれに気づき、涙に濡れた碧眼で見つめてきて、
小さく頷いた。

それが引き金となって、
俺は優しさだけでは抱えきれない、
爛れた情欲を解き放つように、腰を動かし始めた。

シンシア
「はぁんっ! ん、ぁっ、すご……そんな……ひゃあっ!
激しぃ……すぎます……王子っ、こわれ、壊れてしまいますっ!
だめっ……痛みが、気持ちよさに、飲まれちゃう……ああァっ!」

甲高い声があがると同時に、彼女の膣内が驚くほどに狭まって、
俺のペニスをこれでもかと締めつける。
そこから生み出される快感に、射精感が高まっていくのを感じた。

シンシア
「……ぁぁンっ……こんなの……気持ちいいに決まってます……、
ふぁアッ……王子が、どんどん私のなか……ぁっ、んんっ……、
いっぱい……いっぱいですぅ……いやぁあああんっ!」

彼女の手が、痛いほどに俺の腕を握りしめる。
その痛みが、下半身の快感とないまぜになって、
俺の限界をすぐそこまで引き寄せる。

シンシア
「王子ぃっ、わたし……ぁあっ、もう……だめぇっ……、
こわい……こわいです……なにか……んぁあっ、
でちゃう……ぅぁっ、ひゃぁあんっ!」

彼女がまるで幼子のように必死に抱きついてくる。
俺はそれ以上の確かさをもってシンシアを抱き返し、
より深く、より愛しく、彼女に腰を打ち付ける。

シンシア
「おかしく……なっちゃうっ……王子ぃ……ぁあっ、イクっ!
イっちゃぅっ……だめだめだめぇっ! 王子ぃ……一緒にッ
……一緒に、イきたいのにっ……もう……イっちゃいますぅっ!」

ひときわ大きな嬌声を放つと同時に、
彼女の身体がびくんと反り返り、
その手が俺の背に爪を立てた。

刻まれていく熱いくらいのその痛みに誘発されるように、
俺はシンシアの中でこれ以上ないほどに射精してしまった。

シンシア
「ひゃぅっ! あ……ぁあっ……あつ、い……んっ、ふぁあ!
これ、が……王子の……ドクドクって……いっぱい……ぁあっ、
もっと、ください……もっと、満たして……ぁ、はぁっ……」

彼女のひくつく身体と、不規則な膣の締め付けに、
俺はまるで搾り取られるようにして何度も何度も
精液を射出させ、互いが崩れないようにと抱き合った。

息づかいから荒さが消え、
ゆるやかな時間と感慨に浸りかけたところで、
俺達はゆっくりとベッドに横になった。

シンシア
「まだ……膣から溢れてきます……。
ああ……わかります……王子が、いっぱいなんです……
あの……王子? 私の身体……気に入ってくれました?」

恥ずかしさを隠すようにイタズラっぽく笑いかける
シンシアの顔が、妙に大人っぽく見えて、
俺は視線をそらしながら、あいまいに頷いて見せた。

シンシア
「私……この身体が嫌いでした……聖霊なのに……皆と違う。
でもこうして王子とひとつになれるのは私だけ、です……。
これで、私に意味ができました……胸を張って生きる意味が……」

シンシアは、俺の首に手を回し、
すこしおびえを残しながらも抱きついてきた。

シンシア
「王子を受け入れた時の痛みに比べれば、これから私が
向き合うべき世界の凄絶さなんて、ちっぽけなものです。
私、明日ちゃんとニナやフローリカに謝ります」

蒼天を思わせるシンシアの瞳が、
すぐ近くで、ありえないくらいの美しさで、
確かな決意を湛えて俺を見つめていた。

シンシア
「王子がくれた意味を、私なりに育ててみたいと思います。
この身体が王子と同じ規格であること、そして聖霊であること。
その境界をどうするか……いつか答えを見つけたいと思います」

見つかるといいな、と囁いて、
俺はシンシアの頭を撫でる。

シンシア
「王子……大好きです……」

言葉は空ろで、とりとめがない。
気持ちの半分だって伝えてはくれない。

だから、何度でもこの手で彼女を撫でてみせる。
シンシアが、もう寂しくならないようにと。
何度でも。何度でも。